なぜ、真剣に考えると同じ答えになるのか

「人と同じことをしていても儲からない」 

経営をしていると、一度は聞いたことがある言葉だと思います。「他社と差別化しなければ」「独自性を持たなければ」と、多くの経営者の方が日々、知恵を絞っているのではないでしょうか。私自身も、その一人です。

私は今年の3月末までWebライターとして地域の店舗経営者への取材活動を行っていました(詳しくは 🔗 当事務所の強み(3つの視点)をご覧ください)。また、過去にはおよそ8年間、営業担当として経営者の方々と深く関わってきた経験もあります。

双方の経験から、何人もの経営者の方にお話を伺う中で、あることに気づきました。「なぜその手法を選んだのですか」と尋ねると、多くの方が、業界の先輩や地域の仲間から「成功事例」を丁寧に学び、取り入れていたのです。

価格の決め方も、仕入れ先も、接客のスタイルも、それぞれの方が、周囲の確かな知見を吸収しながら作り上げてきたものでした。

話を聞いた経営者の方々は、誰一人として思考を止めていませんでした。真剣に考え、経験を積み、顧客の声に耳を傾け、失敗を避けようとしてきた結果として、その最適解にたどり着いていました。

真剣に考えると、多くの方が不思議と似た答えにたどり着くのはなぜでしょうか。

この現象について、もう少し掘り下げてみます。

人は、考える前に「材料」を選んでいる

経営判断をするとき、材料にするものがあります。自分の経験、社内の人間の意見、同業者のやり方、業界の常識、顧客の声、過去にうまくいった方法。
これらを材料にして考えるのは、当然のことだと思います。知らないことを全部自分で調べることはできないので、自分が所属している集団の中で流通している情報を、判断材料として使う。これは経営者に限らず、人間として自然です。

ただ、ここで一つ、忘れがちなことがあるように思います。考え方が同じだから、同じ結論になるのではありません。考えるために集めている材料が、そもそも似ているから、似た結論にたどり着くのではないでしょうか。

判断の材料が限られていれば、そこから導き出せる選択肢も、自然と限られてきそうです。

同業者、仕入れ先、取引先、地域の集まり、昔からの常連客。どれも大切な情報源で、話を聞いた経営者の方々も、そうした場所から丁寧に情報を集めていました。これは私自身の情報源も、決して例外ではありません。でも、その情報源のほとんどが、同じような場所を向いているとしたら、どうでしょうか。

私たちが「みんなそうしている」と感じるのには、ちゃんとした理由があります。だから、その材料を採用すること自体は間違っていません。ただ、その材料だけを見て考え続けている限り、たどり着く場所も自然と似たものになりそうです。
そしてビジネスの世界では、同じ材料から真剣に考えた「最も求められる最適解」は、すでにライバルが同じように形にしています。

そんな過酷な市場の中で、同じ材料を持ったまま「考え方や工夫」だけで差をつけようとしても、結局は「すでに誰かがやっている二番煎じ」か、「誰も求めていない独りよがりなもの」にしかならないのではないでしょうか。

自分も、材料の外にはいない

これは、私自身にも言えることです。私も、自分が触れてきた制度や業界の慣習、これまで学んできたことを材料にして、ものを考えています。誰も、完全に材料の外にはいないのだと思います。

同じ材料から、違う答えは出せるのか

「人と同じことをしていても儲からない」という言葉は、正しいのだと思います。ただ、それは「人と違うことをしろ」という話とは、少し違うのかもしれません。

同じ材料を前にして、違う答えを出そうとするのは、案外難しいことです。何人もの経営者の方が同じような情報を見て、それぞれ真剣に考えれば、似たような結論に近づいていく。
だとすれば、問いはこう変わります。

自分は今、誰から、何を材料として受け取っているのか。

その情報源は、どれくらい似た方向を向いているのか。

いつもの相手、いつもの場所から少しだけ外れて、別の業界の話を聞いてみる。それだけでも、考えるための材料は変わります。

もちろん、新しく聞いた話が正しいとは限りません。取り入れる必要もありません。
ただ、今まで考えたことのなかった材料を一つ加えてみる。それだけで、これまで「これしかない」と思っていた答えを、もう一度考え直すきっかけになるのではないでしょうか。

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