人の育成と自動化は、なぜ同じ問題を解いているのか

前回、こう書いて終わりました。

以前取り上げた30人未満の企業と、コンビニや物流のような大量採用業態とでは、抱えている課題の性質が違う。その違いをどう扱うべきかは、稿を改めて考えたい。

その続きを、今回は考えてみます。

30人未満の企業については、こう書きました。

採っても、定着しない。問題は雇用形態ではなく、運用だ。任せる覚悟を持って関わらなければ、投資は回収できない。

コンビニや物流のような大量採用業態については、こう書きました。

そもそも、採れない。補充モデルが前提としていた「求人市場に人がいる」という条件が崩れた。市場に依存できる範囲を、見極める必要がある。

ここで止めていたのには、理由があります。見極めた先に何があるのか、まだ言葉にしていなかったからです。その続きを、ここで考えてみます。
もし市場に依存できる範囲が狭まっているなら、取りうる方向は限られてきます。

  • 依存先を一つに絞らず、複線化する
  • 人手に頼っていた工程を、機器の導入で減らす
  • 採用対象の年齢や国籍の幅を広げる

これらはどれも、「同じ市場から、同じ条件で採り続けること」をやめる方向の打ち手です。
こうして並べてみると、2つの話は正反対のことを言っているように見えます。
一方は、任せる覚悟を持って関わる運用に切り替えること。もう一方は、求人市場への依存を減らす方向に設計を変えること。

しかし、本当にそうでしょうか。もう一段抽象化して見てみます。

1本目で書いたのは、こういう構造でした。
小規模企業は補充モデルを選んだわけではありません。しかし、任せる判断が置かれないまま人を動かし続けた結果、育成投資をかけているのに回収できないという、補充モデルと同じ構造に気づかないうちに陥っていた。

2本目で書いたのは、こういう構造でした。
補充モデルが成立する条件は、「求人市場に人がいること」。この条件が崩れたまま、運用だけが続いていた。

構造の中身は違います。しかし、起きていたことは同じです。成立条件が崩れたのに、同じ運用を続けていた。30人未満の企業が抱えていたのは、採用してもすぐ辞められ、投資が回収できないまま、また採用する。この繰り返しでした。
ここでの「同じやり方」とは、任せる判断を置かないまま、人だけを入れ替え続けることです。任せる範囲を決め、期待することを伝え、投資を回収するつもりで関わる。その覚悟を持つことが、この「同じやり方」をやめる選択です。

大量採用業態が抱えていたのは、求人市場に人がいなくなったのに、これまでと同じ条件で、同じように採ろうとする。この繰り返しでした。

無理に集めようとすれば、採用費と時間がかさみ、それでも質は上がらず、早期に辞められ、さらに混乱が深まります。ここでの「同じやり方」とは、求人市場が痩せたことに気づかないまま、これまでと同じ方法で人を集め続けることです。

依存先の複線化や、機器の導入、採用対象の拡張は、この「同じやり方」をやめる選択です。つまり、表面上の打ち手は違っても、見ている診断は同じです。
成立条件が崩れたことに気づかず、昔と同じ運用を続けていないか。

この問いに対する答え方が、業態によって違う形で現れているだけです。どの打ち手が正しいかではなく、成立条件が変わったのに、昔と同じ運用を続けていないかを、先に確認することが大事です。
ここまで考えると、一つの問いが残ります。

「人手不足」は、本当に人が足りないことが問題なのでしょうか。

そうではなく、成立条件が変わったのに、運用のほうが変わっていないことが、問題だったのではないでしょうか。
採用がうまくいかないとき、多くの現場は採り方を工夫しようとします。

  • 媒体を変える
  • 条件を見直す
  • エージェントを増やす

それも、必要なことではあります。しかし、その前に確認すべきことがあるとしたら。
今の雇用構造は、今の市場を前提に設計されているか。それとも、もう存在しない前提の上に、まだ立ち続けていないか。
この問いに答えることが、採り方を工夫することよりも先に、必要なのかもしれません。

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