家族経営の強さと採用の難しさ

人手不足が続く中で、多くの会社が採用に悩んでいます。その中でも、家族経営や地域との結びつきが強い企業は独特の難しさを抱えています。
求人を出しても人が来ない。採用しても定着しない。ようやく入社した人も数年で辞めてしまう。こうした話は珍しくありません。
しかし、この型の職場で起きている問題は、単純な人手不足だけではないように思います。
人間関係が組織を支えている

この型の職場は、長年の信頼関係によって支えられています。困ったときには助け合う。急な事情があれば融通を利かせる。長く働いてきた人ほど大きな信頼を得る。制度だけではなく、人間関係そのものが組織を支えているのです。これは大きな強みです。だからこそ長く続いている会社も少なくありません。
ただ、この強みは採用を難しくする要因にもなります。なぜなら、この型の職場では、能力があっても定着しにくいことがあるからです。
能力があっても定着しない理由
例えば、非常に優秀な人を採用したとしても、その会社の仕事の進め方や人間関係の作法に合うとは限りません。仕事の成果は出せても、周囲との感覚のずれが大きいと、力を発揮しにくくなります。
「なぜそうなるのか」「なぜその人だけ特別なのか」といった疑問を持つこと自体は自然です。ただ、その疑問が解消されないままだと、職場の暗黙のルールに違和感が積み重なり、関係がぎこちなくなります。
一方で、共同体との相性は良いけれど、仕事の能力が十分ではない人もいます。人柄は良い。職場にも溶け込める。しかし、それだけでは会社は成長できません。
能力だけを重視すると、定着しにくくなる傾向があります。逆に、相性だけを重視すると、業務遂行力が不足するおそれがあります。そのため、両方の視点が必要です。
採用の段階での見極めが重要になる
制度や評価を整えることも大切です。しかし、この型の職場では、人間関係そのものが組織を支えているため、制度だけで解決できる問題ではありません。
だから私は、この型の経営課題は、仕組みや制度をいじるだけでなく、採用の段階での見極めにあると思っています。
どんな人を採るのか。どんな人ならこの共同体の中で力を発揮できるのか。その見極めが非常に重要になります。例えば、自分の専門分野を持ちながら、その力を共同体の中で発揮できる人です。営業、製造、IT、広報、経理実務など、それぞれの分野で力を発揮しながら信頼を積み重ねていける人です。
見えない壁という現実

ただ、そうした人材を見つければ解決するとも言い切れません。長年の信頼関係や人間関係が組織の土台になっている以上、外部から来た人には見えない壁が存在することもあります。
どれだけ成果を出しても、創業家や長年会社を支えてきた人たちとの間に、見えない距離が残ることがあります。
それを不公平だと感じる人もいるでしょう。その違和感が、離職の一因になることもあります。しかし、この型の職場が長年続いてきた理由もまた、その信頼関係の強さにあります。だからこそ、この型の採用は難しいのです。
必要なのは「共感してくれる人」との出会い

能力だけを見ればうまくいかない。人柄だけを見ても会社は成長できない。さらに言えば、この共同体の持つ特徴を理解した上で働けるかどうかも重要になります。
この型の職場に必要なのは、完璧な人材ではありません。自分たちがどんな職場なのかを正直に伝え、その上で共感してくれる人と出会うことの方が大切なのではないでしょうか。家族経営だからこそ生まれる信頼関係や結束力には大きな価値があります。ただ、そのルールが外から来た人にも見えるようになれば、この型の職場はもっと人を受け入れやすくなるはずです。
だからこそ、この型の採用は一筋縄ではいきません。しかし、その難しさから目を背けていては、同じ離職を繰り返します。まずは、自分たちがどんな共同体なのかを正直に言葉にすること。この型の採用は、そこから始まるのだと思います。
