「いい人が来ない」は、入口で間違えている

「いい人が来ない」と感じたとき、多くの場合、問題は人ではありません。
入口の設計で、すでにズレています。
ただ、このズレは採用の段階では見えにくく、後になってコストとして現れます。
広告費や紹介料、面接の時間。
こうした「見えるコスト」だけでは終わりません。
本当に効いてくるのは、合わない人を入れたあとに、静かに積み上がっていくコストです。
「3ヶ月で辞めた」は、50万円では済んでいない
広告費・採用対応・教育を合算すれば、約50万円(*)。
ここまでは、多くの方が想定内として受け止めています。
問題は、このあとです。
教育を担当していたベテランが疲弊し、ミスが増え、現場の空気が悪くなる。
そして、本来辞めなくていい人が辞めていきます。
5〜10人規模の会社でよく起きるのは、次のような流れです。
・残業代の増加:月6万円 × 3ヶ月 = 18万円
・現場の負荷増加による生産性の低下・ミス対応:20万円相当
・再採用コスト:50万円

これらを合計すると、約80〜100万円規模になります。
最初の50万円は、入り口にしかすぎません。
問題は、そのあとに同じ規模のコストがもう一度発生することです。
(*)採用方法や業種によって差はありますが、小規模事業所においては、これくらいのコストがかかるケースは珍しくありません。
「いい人が来ない」は、誤診であることが多い
もちろん、地域や賃金水準、業種によっては、そもそも人が集まりにくいケースもあります。
ただ、現場で起きているズレの多くは、それとは別に「入り口の設計」で生まれています。
「いい人が来ない」と言うと、多くの場合こう解釈されています。
- 求人の質が悪い
- 母集団が弱い
- 人材市場が悪い
つまり、 問題は“外(人材)にある”という前提です。
しかし実際には、
- 仕事内容が曖昧なまま募集している
- 合わない人が集まりやすい求人になっている
- 入社後の役割が明確になっていない
こうした状態が重なった結果として、「誰が来てもズレる」状況が生まれています。
まず1つだけ変えるとするならば、入口の段階でミスマッチを防ぐための情報を、求人票にきちんと出すことです。
すべてを一度に変える必要はありません。最初の一手として、効果が出やすいのはこの部分です。実際には、次のような書き方です。
「日によって担当業務が変動します。受付、電話対応、事務補助、現場補助等を担当していただきます。繁忙時や欠員時には、上記業務の範囲内で相互にフォローを行います」
「チームで連携しながら進める業務が中心です」
こうした記載を加える目的は、業務の実態を正直に伝えることで、その働き方が合わない人が事前に判断できるようにすることです。「自分のペースで専門業務に集中したい」という人には合わない環境だとわかる。結果として、入社後のギャップが減り、早期離職のリスクが下がります。

結果として、教育コストが減り、現場の負荷が下がり、離職率の低下も見込めます。
ただし、これはあくまで「合わない人が来にくくなる」効果であり、求人票の改善だけで職場全体が安定するわけではありません。次に述べる設計全体との組み合わせが必要です。
入口は「求人票だけ」ではない
求人票の改善は、あくまで入口設計の第一歩です。ただし、求人票を直しても、その先の設計が曖昧なままでは、ズレは形を変えて残ります。
ここでいう「入口」とは、求人票だけでなく、
- どんな人を募集するのか(求人)
- 何を任せるのか(役割:担当業務ではなく、状況ごとにどこまで責任を持つか)
- 現場でどう判断するのか(判断基準)
といった、設計全体を指します。
これらが曖昧なままでは、求人票を書き換えてもズレは残ります。
そしてそのズレは、時間差で現場に負荷として現れます。
5〜10人規模の会社ほど、1人のミスマッチが全体に波及します。大企業であればある程度は吸収できますが、小規模な職場では、1人のズレが組織全体の崩れに直結します。
だからこそ、設計の精度が、そのまま経営の安定性につながるのです。
この「入口の設計」が変わらなければ、同じコストは繰り返されます。
採用を増やす、教育を強化する、注意を促す。
どれも間違いではありません。
ただ、設計が曖昧なままでは、現場の負荷が増えるだけで終わるケースが少なくありません。
だからこそ、入口となる設計全体を整えることが、結果的に最もコストを抑える方法になります。
次回は、このズレが現場でどう表面化するのか。体調不良や欠勤といった「揺らぎ」をきっかけに、その差を生む「職場の設計」について。具体的に扱います。

