厚生労働省の令和7年度パンフレットと令和8年度パンフレットを比較したところ、当事務所(オフィスフラン社会保険労務士事務所)が取り扱う助成金を中心に複数の重要な変更が確認されました。「高齢者雇用の支援強化」「育児・介護との両立促進」「賃上げと設備投資の連動優遇」が令和8年度の主要テーマです。今回は、特に注目すべき変更点をピックアップしてご紹介します。
7
拡充・増額
5
新設・追加
8
要件・方式変更
2
廃止・終了

助成金別 主な変更点

以下では、当事務所が取り扱う助成金の中から、令和7年度と令和8年度で変更があったものをピックアップしてご紹介します。

キャリアアップ助成金
新設
情報公表加算の導入(正社員化コース)

自社ウェブサイトや「しょくばらぼ」で正規雇用転換に関する情報を公表した場合、1事業所あたり1回限り20万円(大企業は15万円)が加算される制度が新設されました。透明性の確保に積極的な企業が評価される仕組みになっています。

変更
重点支援対象者の定義が明確化

雇用期間が通算5年を超える有期雇用労働者は「無期雇用労働者」とみなされ、重点支援対象者の「雇入れから3年以上」の区分には該当しないことが明記されました。また、「雇入れから3年未満かつ正規雇用歴が短い者(区分b)」から、新規学卒者が明確に除外されています。

変更
賃金比較の除外手当に「家族手当」が追加

転換前後の賃金規定を比較する際に除外される手当として、従来の通勤手当に加え、家族手当が新たに追加されました。また、令和8年10月以降に転換を行う場合、企業型確定拠出年金の事業主掛金は賃金比較に含めないこととされています。

名称変更・再編
「社会保険適用時処遇改善コース」が「短時間労働者労働時間延長支援コース」に

令和7年度の暫定措置として実施されていた「社会保険適用時処遇改善コース」が、令和8年度版では「短時間労働者労働時間延長支援コース」として掲載されています。支援内容は「1年目の取組」と「2年目の取組」に整理され、常時雇用する労働者が30人以下の「小規模企業事業主」という新たな区分も設けられました。

両立支援等助成金
新設
介護休暇・子の看護等休暇の有給化支援(各30万円)

令和8年4月8日以降を対象として、法定の休暇を有給化する支援が新たに導入されました。介護休暇または子の看護等休暇を有給化(時間単位での取得かつ中抜け可能)し、合計10時間以上利用させた場合に各30万円が支給されます。就業規則の整備が先決となりますので、早めの準備をおすすめします。

拡充
育児休業等業務代替支援コースの対象期間が12か月→24か月に延長

業務代替手当の対象期間が令和7年度の12か月分から24か月分へと倍増しました。また、新規雇用(代替要員)については育休期間が1年以上の場合の区分が新設され、支給額が最大81万円(プラチナくるみん認定事業主は99万円)に引き上げられています(令和7年度の上限は6か月以上で67.5万円)。

厳格化
柔軟な働き方選択制度の導入要件が「2種類以上」→「3種類以上」に

助成対象となるための制度導入数の要件が引き上げられました。一方で新たな加算も創設されており、制度の利用期間を小学校就学前または高校修了前まで延長した場合の「利用期間延長加算」や、障害児等を養育する労働者が18歳まで制度を利用できるようにした場合の「障害児等要配慮支援加算」が追加されています。

65歳超雇用推進助成金
増額
65歳超継続雇用促進コースの支給額が大幅に引き上げ

定年引上げや継続雇用制度の導入に対する支給額が増額されました。例えば「定年を5歳以上引き上げ、かつ60歳以上の被保険者が10人以上」の場合、令和7年度の160万円から令和8年度は240万円へと大幅に増加しています。また、基準該当者を対象とした継続雇用制度を導入した場合の支給区分も新たに設定されました。

変更
高年齢者評価制度等雇用管理改善コースが「実費助成」から「定額支給」に

令和7年度は支給対象経費の60%(中小企業)を支給する方式でしたが、令和8年度からは措置内容に応じた定額(30万円または60万円)の支給に変更されました。機器等の導入を伴う場合は、導入経費の60%(上限50万円)が別途加算される仕組みです。また、令和7年度の6つの措置区分が5つに整理されています。

増額
高年齢者無期雇用転換コースが30万円→40万円に(中小企業)

有期契約労働者を無期雇用に転換する際の支給額が、中小企業の場合、令和7年度の30万円から令和8年度は40万円に増額されました。ただし、転換前の有期契約期間が「通算して1年以上」であることが新たな必須要件として追加されていますのでご注意ください。

留意
予算超過時の申請受付停止が明文化

令和8年度版では、四半期ごとの予算額上限の超過が予見される場合、「事前予告なく支給申請の受付を停止する場合がある」という文言が追加されました。助成金の申請はできるだけ早めに行うことをおすすめします。

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)
変更
eラーニング上限額の激変

改正により、eラーニング・通信制訓練の経費助成上限額は、訓練時間にかかわらず「一律15万円(中小企業)」に引き下げられました。以前のような「長時間訓練だから高額受給」は不可能です。

新設
「中高年齢者実習型訓練」が新メニューとして追加

令和8年4月8日以降に提出された職業訓練実施計画届から、45歳以上の労働者を対象としたOJTとOFF-JTを組み合わせた「中高年齢者実習型訓練」(2か月以上)が新たな訓練メニューとして追加されました。経費助成率は中小企業で60〜75%、賃金助成は1人1時間あたり800〜1,000円となっています。年齢に応じた訓練ルートを示すフローチャートも更新されており、中高年齢者への訓練支援がより使いやすくなっています。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
厳格化
高年齢者(60歳以上)の支給要件に「個別支援」が必須に(令和8年5月1日〜)

令和8年5月1日以降の紹介分から、60歳以上というだけでは助成対象にならなくなります。ハローワーク等で「個別支援(担当者制の職業相談など)」を受けていることが必須条件に変更されます。紹介時点でその方が「個別支援対象者」かどうかを事前に確認することが必要です。

厳格化
賃金台帳の未提出は不支給に(令和8年4月1日申請分〜)

令和8年4月1日以降の申請分から、支給申請時に賃金台帳の提出が確認できない場合、書類不備として受理されず不支給となります。申請前に必要書類を今一度ご確認ください。

廃止
「成長分野等人材確保・育成コース」が令和7年度末で廃止

令和8年度からはこのコースでの新規申請ができなくなります。同コースを活用されていた事業主の方は、代替となる助成金をご検討ください。

人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)
増額
賃金要件加算時の上限額が287.5万円→最大325万円に引き上げ

賃上げ率に応じた3段階の加算体系に整理されました。令和7年度の「5%以上の引き上げ」に加え、令和8年度からは「7%以上の引き上げ(新規追加)」の区分が設けられ、業務負担軽減機器等を導入しつつ賃金を7%以上増加させた場合に助成額の50%が加算されます。最大受給額は325万円(7%加算適用時)となっています。

新設
3%加算に新設条件が追加

3%以上の賃上げによる加算(助成額の25%)を受けるには、①過去3年間の各年度4月1日時点の被保険者数が前年度を下回っていること、②過去3年間の平均賃金の上昇率が3%未満であること、③労働局のコンサルタントや介護労働安定センターによる専門相談援助を受けていること、の3要件をすべて満たす必要があります。

拡充
業務負担軽減機器等の助成率・上限額が拡大

高い賃上げ率(7%以上)に対応する助成率として、従来の「1/2(加算時62.5/100)」に加え「75/100」の区分が追加されました。上限額についても、これまでの187.5万円から最大225万円(75/100適用時)に引き上げられています。

まとめ:令和8年度の助成金を活用するためのポイント

令和8年度は、「高齢者の安定雇用促進」「育児・介護と仕事の両立支援の充実」「賃上げと機器導入を連動させた生産性向上」の3つが主要テーマです。一方で、書類不備による不支給ルールの追加や対象要件の厳格化も目立ちます。助成金は「申請すれば受給できる」ものではなく、要件を正確に把握した上で計画的に取り組むことが重要です。ご不明な点はお気軽にご相談ください。

令和8年度を読む 4つのキーワード

高齢者雇用への重点投資

65歳超コースの支給額が大幅に増額。無期転換も増額されつつ要件強化が進んでおり、継続雇用に本気で取り組む企業への支援が厚くなっています。

休暇の「有給化」促進

介護・子の看護休暇の有給化支援が新設。法定休暇を時間単位・中抜け可で有給化する就業規則の整備が、助成金活用の前提条件になっています。

賃上げ×設備投資のセット優遇

人材確保等支援助成金では7%以上の賃上げ+機器導入で助成率75%・上限225万円に。単なる賃上げより「生産性向上とのセット」が有利になっています。

要件・書類の厳格化

賃金台帳未提出の不支給ルール、重点支援対象者の定義明確化など、不備があれば支給されない運用が強まっています。事前の要件確認と書類準備が例年以上に重要です。