2025年度の助成金 -ポイントと傾向-

厚生労働省の資料などでは、少子高齢化に伴う人口減少が進んでいる現状から今後も労働人口が減り、慢性的な人手不足が続くことを問題視しています。
昨今の法改正や助成金の内容を見ると、こうした労働力不足への対応として、「高年齢者」と「外国人労働者」の積極雇用については現状を維持しつつ、女性と若手、特に将来の労働力確保に向けた「子育て世代」への待遇改善に重点を置いていることが見て取れます。

制度の概況

直近の厚生労働省関係の制度変更では、育児休業に関する給付が拡大しています。
新たに「出生後休業支援給付金」や「育児時短就業給付金」が創設され、育児休業を取得した際や時短勤務をした際の経済的支援の拡充が図られました。

また、離職者が受給する失業給付は、自己都合離職者への給付制限期間が柔和されて「1カ月」に、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限なく失業給付を受給できるようになりました。
こうした制度変更により、労働市場がより流動的になると予想され、意欲のある人が自分にあった職場に転職しやすくなるであろう反面、制度に逆行する人や職場は淘汰されつつある流れがより強くなってきたと言えそうです。

こうした若手への支援が拡大する中、高年齢雇用継続給付については、最大給付率が引き下げられるなど逆の動きも少なからず見受けられます。

助成金の概況

ここで、助成金に目を向けると、「正規雇用と非正規雇用のキャリア形成と賃金格差を埋める取り組み」に対する助成、「育児・介護と仕事を両立させる取り組みに対する助成」などで、拡充と適正化が目立ちます。
育児や介護による離職を防いで正規雇用を保つとともに、様々な事情で非正規雇用を選択した場合でも、正規雇用とキャリア形成や賃金格差が生まれないような環境整備に取り組む事業主への支援に重点が置かれているようです。

「男女ともキャリアと収入を安定させ、より長く労働市場に留まってもらいたい」「安心して次代の子を育んでもらいたい」「需要はあるのに供給が足りていないDXやGX分野のリスキリングに励んでもらいたい」といった目的を感じます。

2025年度の助成金の主な変更点

2025年の助成金は、こうした近年の傾向を反映してか、昨年度に比べて様々な変更が加えられました。いくつかピックアップしてご紹介します。

キャリアアップ助成金

各コースの取り組み実施日の前日までに管轄の労働局長の認定を受ける必要があった「キャリアアップ計画書」ですが、届け出のみでよくなりました。

「正社員化コース」

新たに重点支援対象者として位置づけられた者以外への助成額が減額されるなどして、支給対象者の適性化が図られました。
採用して1年未満の新卒者は対象外です。
重点支援対象者とは、下記1~3のいずれかに該当する者をいいます。

  1. 雇入れから3年以上の有期雇用労働者
  2. 雇入れから3年未満で、次の①②いずれにも該当する有期雇用労働者
    a.過去5年間に正規雇用労働者であった期間が1年以下
    b.過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
  3. 派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者
「賃金規定改定コース」
  1. 賃金引き上げ区分が「2区分」から「4区分」に増え、助成額も拡充されました。
  2. 加算措置は、昨年度の「職務評価を活用して増額改定を行った場合」に加え、「昇給制度を新たに設けた場合」が新設されました。

両立支援等助成金

【廃止】「不妊治療両立支援コース」
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【新設】「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」

不妊治療および女性特有の健康課題に対応するため、「両立支援制度」を利用しやすくするための環境整備に取り組み、実際に従業員がその制度を利用した中小企業の事業主が受給できるものです。女性の活躍を推進する上で欠かせない取り組みと言えるでしょう。

人材開発支援助成金

「人材育成支援コース」

昨今の賃金上昇を踏まえ、賃金助成額が引き上げられました。
有期契約労働者等に対する訓練機会の確保と正規雇用労働者への転換促進の観点から、訓練を実施した場合の経費助成率が引き上げられました。

人材確保等支援助成金

【再開】「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」

下記、1または2を導入することで、離職率の低下に取り組んだ場合に受給できます。

  1. 雇用管理制度(賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度、健康づくり制度)
  2. 業務負担軽減機器等(従業員の直接的な作業負担を軽減する機器・設備等)

まとめ

助成金は、毎年、廃止されたり新設されたり多少なりとも改正が加えられます。
その時々で、組織の目的と従業員の属性に応じたものを見極め、上手に取り入れていただきたいものです。
中小事業者にとって、人の確保は最重要課題です。労働市場の流動性が高まる中、人の流れを引き寄せ、その能力を積極的かつ充分に発揮してもらうためにも、土台となる雇用環境および職場環境には、絶えず目を向け続ける必要があると感じるのですが、いかがでしょうか。